目次
双極性障害とは?
うつ病と躁病の症状を行ったり来たり繰り返す病気です。躁病の程度によって、双極I型障害と双極II型障害の2つに分かれます。自覚症状や経過から診断が行われます。
躁うつ病とも言われているため、うつ病の一種と誤解を受けることがありますが、双極性障害とうつ病は全く別の病気です。双極性障害特有の症状や日常生活における支障がありますので、障害年金を請求する時に気を付けるポイントをご説明いたします。
双極性障害で初めて病院に行った日「初診日」とは
障害年金を請求するために重要なのは、初診日です。双極性障害の症状が出てから初めて行った病院はどこか、その日はいつだったのかを確認することが重要です。症状が出て初めて病院に行った日を障害年金では「初診日」と言います
双極性障害の方は、最初の症状がうつ状態の場合には初めて行った病院では双極性障害とは診断されずに「うつ病」や「不安神経症」という診断をされる場合があります。そのような場合でも、双極性障害の何らかの症状で病院に行ったのであればそこが初診日となります。初診日が確定できたら、①初診日の要件と②保険料納付要件を確認します。
双極性障害で障害年金を受給するためにはいくつかの条件があり、それを全て満たさなければなりません。
具体的には、初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間についての保険料納付済期間と免除期間を合算した期間が加入期間の3分の2以上納められていること。または、初診日の属する月の前々月までの直近1年間に滞納期間がないこと。
初診日の要件と保険料納付要件の両方を満たした上で、双極性障害の障害状態が障害年金を受給できる程度かどうかを判断していきます。
また、どんなに双極性障害の症状が重くなったとしても、初診日の要件と保険料納付要件を満たさなければ、双極性障害で障害年金を受給することはできません。
また、初診日がいつで、どこの病院に行っていたかどうかは、「受診状況等証明書」という書類で証明していきます。
双極性障害で障害年金が受給できる目安~「障害認定基準」
双極性障害の症状がどの程度であれば障害年金がもらえるのか、何級になるのかを具体的に定めたものが「障害認定基準」です。
双極性障害はうつ病等と同じ気分(感情)障害の基準を使います。
1級の認定基準
高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期がありかつ、これが持続したり、頻繁に繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの。
2級の認定基準
気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級の認定基準
気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの
1級から3級までありますが、初診日に国民年金に加入していた方は1級か2級で、3級はありません。3級を受給できるのは、初診日に厚生年金に加入していた方が対象となります。また、双極性障害で障害年金を受給できるかどうかは以下の点も考慮されます。
・双極性障害は、本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものである。したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮する。
- 双極性障害と統合失調症等のその他の精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取り扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。
- 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。
- 人格障害は、原則として認定の対象とならない。
- 神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。なお、認定に当たっては、精神病の病態がICD-10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し判断すること。
※注意
神経症や人格障害は、原則的には障害年金が受給できない病名になりますが、障害年金を受給できるケースはあります。
個々のケースにより判断は異なりますので、具体的な判断については社労士にご相談ください。
双極性障害の診断書と日常生活能力について
双極性障害で障害年金の請求をする場合に使用する診断書は、精神の障害用診断書(様式第120号の4)になります。診断書上で双極性障害の症状がどの程度かどうかは、主に日常生活能力によって審査され、等級が決められます。
その等級を公平に判定するために平成28年(2016年)9月より「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の運用が始まりました。
この「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」には、双極性障害の診断書に記載される「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」に応じた等級の目安が定められています。
日常生活は、食事や身辺の清潔保持など7つの場面として捉え、それがどの程度できるかを数値化し、障害年金の等級を公平に判断できるようになっているガイドラインです。
双極性障害で障害年金を受給する手続き方法
双極性障害で障害年金を請求する場合の流れについてご説明いたします。
障害年金を申請する際には、多くの書類を取得したり作成しなければなりません。
一つずつ確実に進めていけば障害年金を受給することができますが、申請準備に数か月かかることもあります。
初診日の確定
↓
穂胃炎料納付要件の確認
↓
受信状況等証明書の取得
↓
診断書の取得
↓
病歴・就労状況等申立書の作成
↓
各種提出書類の取得・請求書等の作成
↓
市町村役場または、管轄の年金事務所へ提出
↓
障害年金受給
双極性障害で障害年金受給は難しい?
双極性障害は躁状態とうつ状態のサイクルがあり、それぞれの時期によって症状や日常生活の支障が全く異なります。そのため、両方の時期の障害の状態と日常生活の支障をわかりやすく書面に表さなければならないため難しい部分でもあります。
躁状態の時は、陽気で明るく、やる気に満ち溢れているように見えるため、一見症状が良くなったと見られがちです。しかし、双極性障害の当事者からすると、躁状態の時は自分でも高揚感を抑えることができないため、とてもつらいようです。
そこで、双極性障害で障害年金の請求をする時に注意する点がいくつかあります。
躁状態とうつ状態それぞれの時期の支障を整理する
双極性障害の方はうつ病の方と違い、躁状態の時にも困ることが多くあり、躁状態の時に困ることとうつ状態の時に困ることが異なりますので、その両方を診断書や病歴・就労状況等申立書にしっかりと表すことが重要です。
例えば、躁状態の時は以下のようなことがあるかと思います。
- 気分が高揚し、大げさな言動や過激な言動で他人に迷惑をかける
- ついカッと怒りっぽくなり、他人に暴力を振るったりケンカをする
- 一晩中寝ないで活動する
- 気が大きくなり、自分の支払能力を超える高額な買い物を衝動的にしてしまう
- 他人とのトラブルが絶えない
- ギャンブルに依存したり、異性との交遊が派手になる
このような躁状態になると、日常生活や仕事をする上では周囲をも巻き込んでしまう事態となります。しかしご本人はコントロールができないため、とても苦しく自己嫌悪に陥ることもあり、ますますつらくなってしまうのです。うつ状態になると、今度は抑うつや落ち込みにより活動ができなくなりますので、躁状態とうつ状態の大きな波に疲弊してしまいます。
双極性障害の方は、躁状態とうつ状態のうちどちらかというと躁状態の時のほうが苦しいとおっしゃる方が多い印象を受けますが、どちらの症状もご自身で整理して障害年金請求の準備を進めることがよいと思います。
双極性障害を治療しながら働いている場合の障害年金
双極性障害の治療をしながら障害者雇用枠でフルタイム就労をしていたり、パートタイムで働いていたりする方がいらっしゃいます。双極性障害の障害認定基準や等級判定ガイドラインには、就労していたら障害年金を受給することはできないという記載はありません。しかし、働けているという事実のみによって不支給(障害年金がもらえない)になったり、不利な等級で認定されたりすることはとても多いのが現状です。
「働くことができる」=「双極性障害の症状が軽い」と判断されるのです。
双極性障害の方が働いている場合、躁状態の時期は明るく仕事ができていてもうつ状態の時期は休みがちになってしまう、また躁状態の時期は職場で人間関係トラブルが絶えないがうつ状態の時期はこつこつと一人で単純作業ができるというように、何らかの仕事上の支障や制限がある場合が多いです。
最後に
双極性障害で障害年金の申請をする場合、うつ状態の症状や日常生活の支障のみ診断書に書かれたり、病歴・就労状況等申立書に書いたりするものを目にすることがあります。
しかし、躁状態の時には高揚感から、ギャンブルや浪費に走ったり、他人と暴力沙汰になるという支障を抱えている方もいらっしゃいます。
いかに、「うつ状態」と「躁状態」両方のつらさや支障を訴えていくことが重要です。
障害年金制度は複雑で、申請する際は気をつけなければならない点が多くあります。しかし受給できるようになると生活への負担軽減や治療に専念することができるかもしれません。該当している可能性があれば、あきらめずに申請を検討してみましょう。
申請準備に行き詰まったら、障害年金のプロである社会保険労務士に相談することをおすすめします。
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