交通事故やスポーツ事故、病気などによる脊髄損傷、あるいは生まれつきや進行性疾患による肢体不自由でお困りの方にとって、障害年金は生活を支える重要な制度です。しかし「どのくらいの障害があれば受給できるのか」「申請にはどんな書類が必要なのか」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。この記事では、脊髄損傷・肢体不自由で障害年金を申請する際のポイントを、社労士の視点から分かりやすく解説します。
脊髄損傷・肢体不自由とは
目次
脊髄損傷とは、交通事故・転落・スポーツ事故・病気などによって脊髄が損傷を受け、手足の麻痺や感覚障害、排尿・排便障害などが生じる状態です。損傷部位によって、四肢麻痺(頸髄損傷)や対麻痺(胸髄・腰髄損傷)など症状が異なります。
肢体不自由とは、上肢・下肢・体幹のいずれか、または複数に運動機能の障害がある状態を指します。脳血管障害(脳梗塞・脳出血)、関節リウマチ、変形性関節症、切断、進行性筋ジストロフィーなど、原因はさまざまです。
障害年金の等級と認定基準
肢体不自由の障害年金は、上肢の障害・下肢の障害・体幹の障害・肢体の機能障害の4つに分類され、それぞれに認定基準が定められています。代表的な等級の目安は以下のとおりです。
1級の目安
- 両上肢の機能に著しい障害があり、日常生活でほとんど用を足すことができない
- 両下肢の機能に著しい障害があり、座っていることもできない・歩行不能
- 体幹の機能に座っていることができないほどの障害がある
- 四肢麻痺で常時介助が必要な状態
2級の目安
- 一上肢の用を全く廃したもの、または両上肢の機能に相当程度の障害がある
- 一下肢の用を全く廃したもの、両下肢の機能に相当程度の障害がある
- 体幹の機能に立ち上がることができないほどの障害がある
- 歩行や日常生活動作に著しい制限があり、単独での外出が困難
3級の目安(厚生年金のみ)
- 一上肢または一下肢に機能障害があり、労働に著しい制限を受ける
- 長時間の歩行や立ち仕事が困難である
受給できる障害年金の金額
令和8年度の障害基礎年金の金額は以下のとおりです。
- 1級:年額 1,059,125円(月額約88,260円)
- 2級:年額 847,300円(月額約70,608円)
初診日に厚生年金に加入していた場合は、これに障害厚生年金が上乗せされ、3級の方も障害厚生年金を受給できる可能性があります。また、18歳到達年度末までの子がいる場合は加算もあります。
申請に必要な書類とポイント
申請には複数の書類が必要となりますが、特に重要なのは以下の3点です。
1. 受診状況等証明書(初診日の証明)
障害年金は初診日がいつかによって、加入していた年金制度(国民年金か厚生年金か)が決まります。事故であれば事故日、病気であれば最初に医師の診療を受けた日が初診日となります。カルテの保存期間(5年)を過ぎていると証明が難しいケースもあるため、早めに準備しましょう。
2. 診断書(肢体の障害用・様式第120号の3)
肢体不自由の診断書には、関節可動域・筋力・日常生活動作の評価が詳細に記載されます。「日常生活における動作の障害の程度」欄は等級判定に直結する重要な項目です。受診時には、ご自宅での実際の困難さ(着替え、入浴、トイレ、歩行など)を医師に具体的に伝えることが大切です。
3. 病歴・就労状況等申立書
発症から現在までの経過、治療歴、日常生活や仕事への影響を、本人またはご家族が記載します。診断書だけでは伝わらない実生活の困難さを補足する重要書類です。
申請でよくある疑問(Q&A)
Q. 症状が固定していなくても申請できますか?
原則として初診日から1年6か月経過後(障害認定日)に申請しますが、脊髄損傷で手足の麻痺が回復の見込みがないと認められる場合などは、1年6か月を待たずに申請できる「特例」が適用される場合があります。
Q. 障害者手帳の等級と障害年金の等級は同じですか?
いいえ、別の制度です。身体障害者手帳が1級でも、障害年金で1級と認定されるとは限りません。それぞれ独自の認定基準があるためご注意ください。
Q. 仕事をしていても受給できますか?
肢体の障害の場合、就労していることだけで不支給になるわけではありません。ただし、就労内容や配慮の状況も総合的に判断されます。
申請前のチェックポイント
- 初診日が特定でき、その証明書類を取得できるか
- 初診日の前々月までの保険料納付要件を満たしているか
- 診断書に日常生活の実態が正確に反映されているか
- 病歴・就労状況等申立書に発症から現在までの経過が漏れなく書かれているか
脊髄損傷や肢体不自由の障害年金申請は、診断書の記載内容や初診日の証明など、専門的な判断が求められる場面が多くあります。書類の不備や記載内容によって等級が下がってしまうケースも少なくありません。少しでも不安がある方は、障害年金専門の社労士への相談をおすすめします。社労士への依頼費用(着手金)は2〜5万円程度が一般的ですが、初診日の証明が困難なケースなど状況により異なります。
まとめ
脊髄損傷や肢体不自由による障害年金は、上肢・下肢・体幹の機能障害の程度に応じて1級〜3級に認定される可能性があります。令和8年度の障害基礎年金は1級で年額1,059,125円、2級で年額847,300円となっており、生活を支える大切な制度です。申請には初診日の証明、診断書、病歴・就労状況等申立書など複数の書類が必要で、特に日常生活動作の実態を正確に伝えることが重要です。一人で悩まず、専門家のサポートを受けながら、ご自身に合った申請方法を見つけていきましょう。
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