がん(悪性新生物)と障害年金

「がんと診断されたけれど、治療を続けながら働くのが難しい」「抗がん剤の副作用で日常生活に支障が出ている」——そんな状況にある方やご家族にとって、経済的な不安は大きいものです。実は、がん(悪性新生物)も障害年金の対象となる傷病のひとつです。ただし、申請にはいくつかのポイントがあり、ただ「がんである」というだけでは認定されません。この記事では、がんで障害年金を申請する際の重要なポイントを、社労士の視点から分かりやすく解説します。

がん(悪性新生物)は障害年金の対象になる

障害年金というと、手足の障害や精神疾患をイメージする方が多いかもしれません。しかし、がんも障害年金の対象傷病として明確に認められています。がんそのものによる症状だけでなく、抗がん剤治療や放射線治療の副作用、術後の後遺症によって日常生活や就労に支障が出ている場合も認定の対象となります。

対象となる主な状態

  • がんの転移や進行による全身衰弱、倦怠感
  • 抗がん剤の副作用(吐き気、しびれ、白血球減少など)
  • 手術による臓器の摘出や機能低下(人工肛門、人工膀胱など)
  • 痛みや呼吸困難などにより労働や日常生活が制限される状態

がんの障害年金における認定基準

がんによる障害年金は、主に「全身衰弱の程度」と「日常生活・労働への支障の度合い」で等級が判断されます。

等級の目安

  • 1級:身の回りのことがほとんどできず、常に他人の介助を必要とする状態
  • 2級:必ずしも他人の介助は不要だが、日常生活が極めて困難で、労働により収入を得ることができない状態
  • 3級(厚生年金のみ):労働に著しい制限を受ける状態

令和8年度の障害基礎年金額は、1級が年額1,059,125円(月額約88,260円)、2級が年額847,300円(月額約70,608円)です。厚生年金加入中に初診日がある場合は、これに障害厚生年金が上乗せされます。

がんで申請する際の3つの重要ポイント

ポイント1:初診日を正確に特定する

障害年金で最も重要なのが初診日です。がんの場合、「健康診断で異常を指摘された日」「最初に症状を訴えて受診した日」「精密検査を受けた日」など、どこを初診日とするかで結論が変わることがあります。初診日に加入していた年金制度(国民年金か厚生年金か)によって受給できる年金の種類が決まるため、慎重な確認が必要です。

ポイント2:診断書の内容が決め手になる

がんの場合、見た目では分かりにくい「倦怠感」「食欲不振」「治療の副作用」が大きな負担となります。しかし、これらは診断書に具体的に書かれていなければ審査で評価されません。主治医に対して、日常生活でどのような困難があるか、就労にどう影響しているかを具体的に伝えることが重要です。

ポイント3:病歴・就労状況等申立書を丁寧に書く

診断書だけでは伝わりにくい日々の生活状況を補足するのが「病歴・就労状況等申立書」です。発症から現在までの治療経過、副作用による生活への影響、就労状況の変化などを時系列で具体的に記載しましょう。

よくある質問(Q&A)

Q1. 治療中で働きながらでも申請できますか?

はい、働いていることだけで不支給になるわけではありません。ただし、就労内容や勤務時間、職場での配慮状況などが審査で考慮されます。フルタイム勤務でも副作用に耐えながら働いている実態があれば、認定される可能性があります。

Q2. 初診日から1年6ヶ月経たないと申請できませんか?

原則として障害認定日は初診日から1年6ヶ月経過後ですが、人工肛門・人工膀胱を造設した場合は造設日から6ヶ月後など、特例が設けられています。

Q3. 寛解した場合はどうなりますか?

症状が改善し、日常生活や労働に支障がなくなれば支給停止となる場合があります。一方で、再発や副作用が長引く場合は引き続き受給できる可能性があります。

申請前のチェックポイント

  • 初診日を証明できる資料(受診状況等証明書など)が揃っているか
  • 保険料納付要件を満たしているか
  • 診断書に日常生活・就労の困難さが具体的に記載されているか
  • 病歴・就労状況等申立書と診断書の内容に矛盾がないか

がんによる障害年金申請は、傷病の特性上、診断書の書き方や初診日の特定など専門的な判断を要する場面が多くあります。少しでも不安がある方は、障害年金に詳しい社会保険労務士(社労士)へのご相談をおすすめします。専門家のサポートを受けることで、適切な準備と申請が可能になります。

まとめ

がん(悪性新生物)は障害年金の対象傷病であり、がんそのものの症状だけでなく、治療の副作用や後遺症によって生活や就労に支障が出ている場合も認定される可能性があります。申請にあたっては、初診日の特定、診断書の内容、申立書の書き方が三つの大きなポイントです。令和8年度の障害基礎年金は1級で年額1,059,125円、2級で年額847,300円と、治療を続ける方にとって大きな経済的支えとなります。一人で悩まず、まずは年金事務所や障害年金を専門とする社労士に相談し、ご自身の状況に合った最善の申請方法を見つけてください。

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山口 高弘
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